これからの家づくり
世界基準から見ると、日本の家づくりは残念ながら住宅後進国になります。
日本の今までの住宅は“スクラップ&ビルド”というつくり方をしてきました。理由は簡単で、日本は高度経済成長期のときに、住宅を建ててから20~30年後に壊して、もう一度建て直したほうが大きなお金が経済的に回るので、経済を伸ばすためには、よかったのです。
今、そこから1歩進み、“高性能住宅化”が始まりました。これは世界的には当たり前のことで、「良い住宅をしっかりつくりましょう」ということです。
さらにそこから進むと、“ストック&フロー”という、「良い住宅をきちんと長持ちさせましょう」という考え方があります。ヨーロッパやアメリカは、ストック&フローで良い家を長持ちさせるという考え方を持っています。
残念ながら、日本の住宅はスクラップ&ビルドから少し脱して、「やっと住宅の高性能化というのが進んできたかな」というところです。
世界的に見ると、「残念ながら日本の住宅は、まだまだ遅れているんだ」というところを大前提として覚えておいてください。
日本の住宅の寿命は?ー滅失住宅の平均築年数の国際比較ー
『日本の住宅の寿命 = 住宅の資産価値』
御施主様が2,000~3,000万円かけて建てた住宅の資産価値はどのくらい長持ちするのかということが、『住宅の寿命』を意味します。1つ前の項目にも記載してありますが、日本は世界的に見て住宅後進国です。下のグラフにも現れていますが、残念ながら日本の住宅は32.1年で資産価値がゼロになってしまいます。しかし、アメリカでは66.6年、イギリスでは80.6年と日本と比べて約2~3倍の期間、資産価値を維持することができます。
近年、「長期優良住宅」という言葉を耳にしたことがあるかもしれませんが、これは日本の住宅政策の1つになります。要は「長持ちする、いいお家をつくりましょう。」と国が提言しているのです。
現在、長期優良住宅を建築したり購入したりすると、金利が少し安くなったり、補助金が少しもらえたりします。国をあげて、日本の住宅の流れを「長持ちするいいお家をつくる」という方向に転換していっているのだということを覚えておいてください。
<参考資料>
日本:総務省「平成20年、平成25年住宅・統計調査」(データ:2008年、2013年)
アメリカ:U.S.Census Bureau「American Housing Survey 2003, 2009」(データ:2003年、2009年) http://www.census.gov/
イギリス:Communities and Local Government「2001/02, 2007/08 Survey of English Housing」(データ:2001年、2007年) http://www.communities.gov.uk/ より国土交通省推計
先進国で日本の住宅は認められている?
先進国であるイギリスでは保健省、日本でいう厚生労働省が、住宅に関する法律をつくっています。
イギリスでは新築住宅を建築する際に、「真冬の室内温度が18℃以下になるお家をつくってはいけない」という法律があります。
なぜかというと、健康状態に関わるからです。18℃未満では血圧の上昇、5℃未満では低体温症の危険性が大きいということで、基本的人権の尊重に関わるからです。残念ながら日本ではまだここまで明確に定義がされていません。
健康性・安全性の劣る住宅に改修・閉鎖・解体命令
(英国住宅法2006年改正)
◎21℃ 推奨温度
昼間の居間の最低推奨室温
○18℃ 許容温度
夜間の寝室の最低推奨室温
△18℃未満
血圧上昇、循環器系疾患の恐れ
△16℃未満
呼吸器系疾患に対する抵抗力低下
× 5℃
低体温症を起こす危険大
× 4-8℃
集団レベルで観測される死亡増加する平均外気温度の閾値
<出典>英国保健省イングランド公衆衛生省「イングランド防寒計画(Cold Weather Plan for England)2015.10」
これからの住宅選びに必要なこと
これから家づくりをするのではあれば、住宅の省エネ性能を見るようにしてください。省エネ性能が高いのか低いのか、ここを判断するのがまず第一のポイントになります。
省エネ性能が高い住宅のことを、『高性能住宅』、『省エネ住宅』と言ったりします。では、この「省エネ性能が高い住宅」とは何かというと、『高断熱』で『高気密』な住宅が、省エネ性能が高い住宅になります。
それではなぜ、省エネ性能が高い住宅が重要なのか。省エネ性能が高い住宅をつくることは、4つのメリットがあります。
どれか1つだけこだわった住宅をつくるのは、すごく簡単です。
「快適性だけこだわった住宅」、「経済性だけこだわった住宅」、「健康性だけこだわった住宅」、「安全性だけこだわった住宅」、どれか一つだけこだわった住宅をつくるのは簡単なのですが、すべてをまかなった住宅をつくろうと思うと、すごく大変なことです。
そのとき、やはり省エネ性能というのが1つポイントになります。この省エネ性能をしっかりとした住宅をつくることで、この4つのメリットが大きくなっていくということなので、今後家づくりをするのであれば、この省エネ性能ということを1つポイントに入れて、ご検討いただければと思います。
家庭内事故で亡くなる方は交通事故の約6倍!
原因のほとんどが「ヒートショック」によるもの
「ヒートショック」とは急激な温度差が体に及ぼす悪影響のことです。急激な温度差によって血圧が上がり、脈拍が早くなったり、心臓に負担がかかることを言います。
日本では年間約19,000人亡くなっています。一方、交通事故は、約3,000人なので家の外より家の中で亡くなる方が圧倒的に多いのです。大きな原因は、「急激な温度差」になります。残念ながら日本の今までの住宅は、特に冬場は温度差が激しく、リビングとお風呂にいるときでは大きな違いがあります。夜中寝ているときにも、ヒートショックが大きいのです。
ヒートショックを防ぐには、「家の断熱性」、「家の気密性」を高めれば良いのです。
結論から言うと、ヒートショックを防ぐには「家の断熱性」、「家の気密性」を高めれば良いのです。断熱性が高ければ室内の熱が逃げにくく、気密性が高ければ暖房が家全体に効いてきます。また、計画的な開口部の取り方や壁や屋根だけでなく、床下や基礎部の断熱性を高めればさらに万全です。
健康状態・病気の改善
あるデータの一部ですが、省エネ性能が高い住宅に住む前と住んだ後でどのぐらい健康状態が改善したかというデータになります。
慶応義塾大学で住宅健康調査をしている第一人者の伊香賀俊治先生のデータを引用しています。
高性能住宅に住むことによって、アレルギー性鼻炎、アレルギー結膜炎、アトピー性皮膚炎なども症状が軽減したり、関節炎や肺炎、糖尿病なども軽減したり改善されるという調査結果になります。
理由として挙げられているのは、一番は「体へのストレスが軽減されたから」だと言われています。室内の住環境の温度差がなくなることによって、体へのストレスが軽減され、病気になる確率が下がったり、病気が改善したりするのです。
住宅と健康は、密接に関わっているとデータにも出ているので、国としても対策をするしかありません。今後、日本は少子高齢化でお年寄りが増え、医療費増大が予想されます。そうすると、「住宅」と「健康」は密接に関わっているので、そこにも手を打つわけです。
省エネ住宅ロードマップ
あるデータの一部ですが、省エネ性能が高い住宅に住む前と住んだ後でどのぐらい健康状態が改善したかというデータになります。
国は基準を適時変えていきます。真ん中の「省エネ義務化」というところが、「2020年全ての新築住宅で省エネ義務化」に当たります。7年前の2013年には、省エネ基準の改定があり、2012年には低炭素住宅認定と、段階的に基準を変えています。2030年にも「ゼロエネルギー住宅」と、基準を変えようとしています。さらにその上「ライフサイクル カーボンマイナス住宅(ヘルシー住宅)」と続きます。
段階的に基準、法律を変えようとしているので、今、家づくりをするのであれば、最低限、この省エネ義務化という基準をクリアしておかなくてはいけません。なぜならば、資産価値にも大きく関わるからです。例えば、2~3年前に家を建築や購入した住宅が、2020年の基準に達していないと、今年になると資産価値が大きく下がります。当然、今の基準に達していないわけですから、基準非適格となります。住宅を貸そうとか売ろうとか思ったときには、基準に達していないため資産価値が落ちてしまうというところです。
住宅性能を確認するためには?
いまさら「長期優良住宅」基準?
実際に、省エネ義務化とは、どういうところを見ていけばいいのでしょうか。
省エネ性能が高い住宅というのは、「高断熱」であり、「高気密」な住宅です。この2つをしっかり確認していけば良いのです。
まずは、断熱性能。高断熱性能は、UA値という数字で確認することができます。UA値は、数字が小さければ小さいほど、性能が高いです。日本は北海道から沖縄まで縦に長く、関東は6地域に該当します。この6地域のUA値が0.87です。ただし、0.87では基準ギリギリなので、弊社では物件のグレードにもよりますが、0.6以下を基準値としています。